【裁判関係本のレビュー-15】民事訴訟マニュアル―書式のポイントと実務― 第2版 上 単行本(ソフトカバー)- 2015/8/31 岡口 基一 (著)

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    ★★★☆☆ 3点

    レビュータイトル:本人訴訟の方向けレビュー 2015年11月22日

    本人訴訟の原告です。
    以下のレビューは「本人訴訟をしようとしてこの本を検討している方」向けに書きます。
    ※その他の方、例えば弁護士とかプロの方には役に立ちませんので飛ばしてください。

    話題の本が3年ぶりに改定(2015/8/31)との触れ込みを読んで読んでみました。
    「マニュアル」とついていますが、実際の提訴の手順に従って関係法令を順番に並べ、
    その条文に関する様々な(本当にたくさんの)意見やら判例やら他書籍からの引用やらを
    併記してその手続きについての理解を深めようという誠に手間ひまをかけた労作です。

    例えば「本人のハンコが押してあったら本人の意思で成されたもの」と推定されてしまう
    という納得のいかない常識が流通していますが(私はそのように理解していましたが)、
    その推定を覆す事由も存在する事は初めて知り、興味深く読みました。(証拠調べ301頁)

    それらの「今まで聞いた事も読んだ事もない引用文」を大量に読むうちに、つくづく
    この初めての訴訟中に感じた事と同じ気持ちが充満してきました。どう言う事かというと

    「日本の裁判手続きというのは《これが根拠》というような確定した根拠規定というものが無い」
    「実際はこうしているからそうしているというものが非常に多い」
    です。
    そもそも訴訟に関するマニュアル本や弁護士の書いた本がこれだけたくさんある、というのがこのことを裏付けています。私は航空機操縦士ですが「操縦士が操縦について書いたマニュアル本」など存在しません。何故なら「本物」が一冊あればあとはいらないからです。(航空機ごとに存在します)また、法律についても根拠法規があればそれを読めば済む話なのに、こと民事訴訟に関しては法規があってもそれだけでは済まず、本屋にはたくさんの「解説書」が溢れかえっています。

    本書を見ると増す増すその現実が分かります。ひとつの条文についてああも言われている、こうも言われている、という紹介文が多過ぎるのです。

    結果、網羅し過ぎて全体の見通しができない、今自分は森の中の何処にいるのかというのが
    さっぱり分からなくなる。

    ですから労作で、よく網羅的に調べてあって、およそ例外中の例外手続きまで漏れなく記載されているけれども
    これで「訴訟の経験のない素人」が「訴訟というものの全体像をつかめるマニュアルか」というとそういう目的には逆に作用する本です。
    何か困った時に「このことについては今どんな見解が主流であるか」を調べるのには最高でしょう。

    ですから、本人訴訟の原告として本当に知りたい次のような事はまったく書かれていません。
    「請求の趣旨とはどのように書くものなのか」
    「準備書面を書く上で戦略的に重要な事は何か」
    「準備書面と陳述書はどこがどう違うのか」
    「弁論準備では何を心がけるのか」
    「尋問事項は質問を具体的に書くのか、そうではなくて見出しだけでよいのか」<<<この事など、民事訴訟規則第百七条2に「尋問事項書は、できる限り、個別的かつ具体的に記載しなければならない」とはっきり書かれているのに、根拠法規がそう謳っているのに、「尋問事項:原告(注:私です)による攻撃及びこれに対する対応について」などと書いてくるベテラン弁護士が存在するのです。これは「不意打ちの質問をする」つもりなのが読み取れますが、それが裁判所で通るのが不思議です。

    この本は、こんな事はどこか法科大学院とかで教わってきた人が、その上で実務の細かいところについての
    疑問を解消する目的で読む本と思います。
    ということで、本人訴訟の方には、残念ながら、まったく薦める事ができません。
    星三つは、そういう意味での評価です。

    ※下巻も読みましたが、いよいよ本人訴訟の判決後にはおよそ経験しない事例が中心なので
    こちらはレビューを書きません。

    本人訴訟の方が民事訴訟について詳しく知るためなら書式 民事訴訟の実務―訴え提起から訴訟終了までの書式と理論 (裁判事務手続講座)を薦めます。ただし、こちらも本人訴訟には内容が濃すぎるくらいですが、見通しはずっと良いです。
    書類の書き方は、法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writingに勝るものを知りません。ただし、普段からビジネス文書を書き慣れている人向けです。

    この本のアマゾンのリンク



    被告の似顔絵
    澤村翔子




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