【裁判関係本のレビュー-15】民事訴訟マニュアル―書式のポイントと実務― 第2版 上 単行本(ソフトカバー)- 2015/8/31 岡口 基一 (著)

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    ★★★☆☆ 3点

    レビュータイトル:本人訴訟の方向けレビュー

    本人訴訟の原告です。
    以下のレビューは「本人訴訟をしようとしてこの本を検討している方」向けに書きます。
    ※その他の方、例えば弁護士とかプロの方には役に立ちませんので飛ばしてください。

    話題の本が3年ぶりに改定(2015/8/31)との触れ込みを読んで読んでみました。
    「マニュアル」とついていますが、実際の提訴の手順に従って関係法令を順番に並べ、
    その条文に関する様々な(本当にたくさんの)意見やら判例やら他書籍からの引用やらを
    併記してその手続きについての理解を深めようという誠に手間ひまをかけた労作です。

    例えば「本人のハンコが押してあったら本人の意思で成されたもの」と推定されてしまう
    という納得のいかない常識が流通していますが(私はそのように理解していましたが)、
    その推定を覆す事由も存在する事は初めて知り、興味深く読みました。(証拠調べ301頁)

    それらの「今まで聞いた事も読んだ事もない引用文」を大量に読むうちに、つくづく
    この初めての訴訟中に感じた事と同じ気持ちが充満してきました。どう言う事かというと

    「日本の裁判手続きというのは《これが根拠》というような確定した根拠規定というものが無い」
    「実際はこうしているからそうしているというものが非常に多い」
    です。
    そもそも訴訟に関するマニュアル本や弁護士の書いた本がこれだけたくさんある、というのがこのことを裏付けています。私は航空機操縦士ですが「操縦士が操縦について書いたマニュアル本」など存在しません。何故なら「本物」が一冊あればあとはいらないからです。(航空機ごとに存在します)また、法律についても根拠法規があればそれを読めば済む話なのに、こと民事訴訟に関しては法規があってもそれだけでは済まず、本屋にはたくさんの「解説書」が溢れかえっています。

    本書を見ると増す増すその現実が分かります。ひとつの条文についてああも言われている、こうも言われている、という紹介文が多過ぎるのです。

    結果、網羅し過ぎて全体の見通しができない、今自分は森の中の何処にいるのかというのが
    さっぱり分からなくなる。

    ですから労作で、よく網羅的に調べてあって、およそ例外中の例外手続きまで漏れなく記載されているけれども
    これで「訴訟の経験のない素人」が「訴訟というものの全体像をつかめるマニュアルか」というとそういう目的には逆に作用する本です。
    何か困った時に「このことについては今どんな見解が主流であるか」を調べるのには最高でしょう。

    ですから、本人訴訟の原告として本当に知りたい次のような事はまったく書かれていません。
    「請求の趣旨とはどのように書くものなのか」
    「準備書面を書く上で戦略的に重要な事は何か」
    「準備書面と陳述書はどこがどう違うのか」
    「弁論準備では何を心がけるのか」
    「尋問事項は質問を具体的に書くのか、そうではなくて見出しだけでよいのか」<<<この事など、民事訴訟規則第百七条2に「尋問事項書は、できる限り、個別的かつ具体的に記載しなければならない」とはっきり書かれているのに、根拠法規がそう謳っているのに、「尋問事項:原告(注:私です)による攻撃及びこれに対する対応について」などと書いてくるベテラン弁護士が存在するのです。これは「不意打ちの質問をする」つもりなのが読み取れますが、それが裁判所で通るのが不思議です。

    この本は、こんな事はどこか法科大学院とかで教わってきた人が、その上で実務の細かいところについての
    疑問を解消する目的で読む本と思います。
    ということで、本人訴訟の方には、残念ながら、まったく薦める事ができません。
    星三つは、そういう意味での評価です。

    ※下巻も読みましたが、いよいよ本人訴訟の判決後にはおよそ経験しない事例が中心なので
    こちらはレビューを書きません。

    本人訴訟の方が民事訴訟について詳しく知るためなら書式 民事訴訟の実務―訴え提起から訴訟終了までの書式と理論 (裁判事務手続講座)を薦めます。ただし、こちらも本人訴訟には内容が濃すぎるくらいですが、見通しはずっと良いです。
    書類の書き方は、法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writingに勝るものを知りません。ただし、普段からビジネス文書を書き慣れている人向けです。

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    被告の似顔絵
    澤村翔子




    【裁判関係本のレビュー-14】書式 民事訴訟の実務―訴え提起から訴訟終了までの書式と理論 (裁判事務手続講座) 単行本 - 2012/5/1

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      ★★★★★ 5点

      総評:本人訴訟の方は訴訟前に必読

      本人訴訟の原告です。自分ですべて調べないとならない立場です。
      民事訴訟を提起して気がつくのは、
      民事訴訟の実務というのは「明文規定」がどこにも無いものが非常に
      非常に
      非常に!
      多い、という事実。こんなことは他の省庁では考えられません。
      (各省庁には文書規定というものがあって用語の定義から使い方まできっちりしている)

      どう言うことかというと、まず「訴状」の「用紙設定」から悩むわけですが
      どこにも根拠規定がありません。2001年1月1日から(つまり21世紀から)A4用紙を使うようになった
      ということはあちこちで聞きますが、じゃ、文字のポイント数や1ページの文字数や、余白は何センチ
      なのか、ということがどこにも根拠規定がありません。他にも、「見出し」の番号はどのように書くのか
      (第1章と書くのか第一部と書くのか、枝番は(1)(2)、と書くのか´△覆里アイウなのかabcなのか)
      などのことが、どこにも決まっていない。証拠文書には甲◯号と書くそうだけど、枝番は◯-1なのか◯-aなのか
      などなど、そういうことは例えば防衛省ではきっちり決まっています。それが裁判の書類には無い。

      書式がそもそも決まっていない、ということは、当然、「何をどのように書くのか」という事も決まっていません。
      「書かなければならないこと」は決まっています(請求の趣旨、請求の原因など)が、
      それはどのように書くのか、という根拠規定がありません。「陳述書」など、それが何なのかという「定義」さえ
      どこにも明文規定が無いという有様でびっくりします。こんなことは他の省庁では有り得ません。

      ということで、この本はそれらを遺漏なく網羅して説明してある本です。個人が執筆したものを根拠にして良いのか
      という大きな疑問が湧いて来ますが「実務経験者が実務の実態を解説している」「みんなそうやっている」という
      内容なので、部外者にはとっても参考になります。もともと、著者は「熱意さえあればこの本一冊で、ある程度の民事訴訟であれば
      本人訴訟が可能となるような本にしたい」と考えたそうですが、出版社の意向は「司法書士向け参考書」ということで
      その分、ボリュームが大きくて本人訴訟では必要になる可能性がほとんど無いことまで書かれています。
      言い換えれば「プロでもここに書かれていることだけで仕事が始められる」レベルのもので、
      価格がそれなりにしますが、本人訴訟の参考書としては過剰品質ではあるけれけども必要十分以上の内容となっています。
      本人訴訟の方は、この本は訴訟前に必読書と言えるほど優れた一冊と思います。民事訴訟の流れについては
      これだけあれば類書は読む必要がまったくありません。(あるとすればもっと薄い、要点だけ書いた本ぐらいです)
      お薦めします。

      ★A4用紙の書式について書いてある本を見たことがありませんが、この本にはありました。
      文字は12ポイント、一行の文字数は37字、一頁の行数は26行
      マージン 上35mm、下27mm、左30mm、右15mm
      これは根拠規定があるわけではなく、裁判所で使用しているワープロソフトではこのようにみんなしている
      というものだそうです。ただし、「句読点は,と。を使用することになっている」とも書かれていますが
      それは判決書はそうですが提出する書類(訴状とか準備書面とか)ではコンマを使っていないと受理されないなど
      ということはありません。普通に「、」と「。」で提出できます。また、文字数は原稿用紙のように一行の字数を
      決める必要はなく、実際プロポーショナルフォントを使用すると一行に入る文字数はバラバラになりますが
      問題なく受理されます。

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      訴訟の相手
      澤村翔子

      【裁判関係本のレビュー-13】ライブ争点整理 単行本(ソフトカバー) 2014/5/26 林 道晴 (編集), 太田 秀哉 (編集)

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        ★★★★☆ 4点

        総評:臨場感のある、珍しい訴訟関係本

        本人訴訟の原告です。
        なにしろ初めての訴訟なもので、聞くもの見るものみんな珍しく
        どこにも書いてない事に出会うのが「初めての訴訟」です。

        二年半も係属してやっと「争点整理」まで来ましたが、手続きについてはもう完全理解していますが
        実際のところ、裁判所でどういう「やりとり」が行われるのか、は、やってみないと分からない。
        そのことについて「ライブ」で解説してくれるのが本書です。

        最初は「ライブ」の意味が分かりませんでしたが、
        「実際に裁判期日に各人がどんな発言をして、心の内ではどんなことを考えるのか」
        を具体的に臨場的に記述してくれている本なのです。
        これは裁判を傍聴していても分からない「心の声」までも書かれているので
        他に類書のない、とても興味深く読める本でした。

        ただし、裁判というのは原告、被告、裁判官、代理人弁護士が参加するものなので
        どういう人が加わっているかによって中身は非常に違う。この本に書かれている架空の事例でも
        「実際の出演者」によってこの本に書かれている展開とは異なる展開、結末、に進むものではないか。
        というのも、私の現在経験している訴訟の進行は、この本のような展開にはまったくなっておらず、
        相手の代理人弁護士は「企業契約」が専門らしく民事訴訟の経験が乏しいために攻撃防御の方法が
        素人の私の目からも不備が多く、争点についてもまったく絞りきれず、求釈明に対しても回答を拒否して
        裁判長に窘められる、といった具合でその様相はかなりこの本とは異なるからなのです。
        言い換えれば、この本のように裁判が進行するなら理想的。といった内容の本ではないでしょうか。

        日本の裁判がなぜ時間がかかるのか、争点整理に一年もかかるような裁判が実際にあることを経験すると、
        その理由は「弁護士がヘボだから」というのが実のところというのが実感です。もっとこんな本を読んで
        勉強していただきたいものです。

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        澤村翔子
        あのバラ

        【裁判関係本のレビュー-12】プロ弁護士の思考術 (PHP新書) 新書 – 2007/1/16 矢部 正秋 (著)

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          ★☆☆☆☆ 1点

          総評:老人の価値観

          本人訴訟の原告です(係争中)

          相手は代理人弁護士をつけており
          素人対プロ弁護士という格好です。だから相手を知るために読んでみました。

          わざわざ「プロ弁護士の」とタイトルをつけるだけあって、典型的な若者批判から始まります。
          曰く
          「ベテランと若手とでは、考える力に、将棋のアマとプロのように歴然とした差がある」
          「若手の考えは、曲がったり、ねじれたり、方向違いのことが多い」

          ・・・まったくの上から目線。よっぽど部下にバカが多いのか、或いは自分がよっぽど
          大した人間だと思っているのか、、、若くたってアタマの切れる人はいるし
          ベテランでもバカはいくらでもいるでしょう。単にこの著者の世界が狭いだけ、と初めから反感を覚えました。
          そもそも「先生」と呼ばれるものにロクな人物はいない。その典型です。

          内容は「自分はこんな本を読んでいる、知っている」という引用(パスカル、和辻哲郎、ルース・ベネディクト,,,)
          がしょっちゅう出てきますがそれが自分の思想や思考とどう結びついているのかという「昇華」がまったく無いのです。
          教養がある、という自慢でしかありません。人の言葉を自分の言葉として語る事ができていない。

          内容も「はじめに」に凝縮されたメッセージに書かれているように
          頭のできの悪い経験のない若手諸君に「ああしろこうしろ」の説教なのです。
          それで本当に人間が伸びる事はありません。何故かというと
          「そこに書かれている事をその通りする」というのはバカの再生産にしかならないからです。
          みんなが同じ方法で思考が伸びるわけが無い。個々が自分のオリジナルの術を個別に開拓する事が
          本当の思考を伸ばす唯一の方法だからです。その方法はこの本には書かれていません。

          普段から「偉そうにしている」弁護士先生が書かれた「説教本」を読みたいなら
          これに勝る本はありません。大嫌いなタイプの本です。

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          澤村翔子

          【裁判関係本のレビュー-11】事実認定の考え方と実務 単行本 – 2008/3/1 田中 豊 (著)

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            ★★★★★ 5点

            総評:本人訴訟にも役立つ必読書 星五つ! ☆☆☆☆☆

            本人訴訟の原告です。
            参考になるかと読んでみました。

            タイトルからは、事実認定権を持つ「裁判官」を読者として想定した
            「裁判官が正確な事実認定をするために注意すべき事」についての論考か
            とも予想しましたがそうではなく、実は
            「裁判官を正しい事実認定に導くために心すべき事」という観点も常に念頭において
            話を進めたいと考えています、と「はしがき」に書かれています。

            つまり、本人訴訟を初めて経験する人が裁判官に「正しい事実認定」をしてもらうための
            指南が書かれている、ということなのです。有り難いです。素晴らしい視点です。
            なぜそのような視点を著者が持ったかというと、これも「はしがき」に書かれていますが
            「正しい事実認定も誤った事実認定も基本的には当事者による主張・立証活動の質と量とを反映させたものである」
            「すなわち、判決中での誤った事実認定は、当事者の主張・立証活動の失敗作という側面もある」
            と、著者が長い経験から考えるようになったからなのだそうです。

            これは説得力があります。そして、まず民事裁判における事実認定の大枠(総論)を解説した後に
            かなりの数の事例(最高裁判例と下級審裁判例)をとりあげて実際の事実認定における実践的な
            解説(各論)が展開されます。事例が豊富なので事実認定の「普遍的な考え方」が自習できるのです。

            素晴らしいです。本人訴訟の方は必読です。この本と併せて同じ著者の
            「法律文書作成の基本  Legal Reasoning and Legal Writing 」を読めば、法律に素人の人間にも
            「裁判官の心証を勝ち取る主張活動すなわち完璧な準備書面の作成」が可能になる事を請け負います。

            田中豊氏の著書には本当に感謝しています。
            勝訴まであと少し。頑張ります。

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            【裁判関係本のレビュー-10】有利な心証を勝ち取る民事訴訟遂行 単行本 – 2015/1/31 佐伯 照道 (著), 天野 勝介 (著), 森本 宏 (著), 米倉 裕樹 (著)

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              ★★☆☆☆ 2点

              総評:新米弁護士が読むなら評価は違うのかも知れません。或いは「経験があっても分かってない弁護士」が読むのも良いかも知れません。

              本人訴訟の原告です。

              最初に書いときますが、☆ふたつ、の評価は「民事訴訟を本人訴訟で初めて提起する」人間からの評価ですのでご承知おきください。
              ※読み手の立場によって評価軸が変わるのは当然ということを諒解してください。そうじゃない弁護士がたくさんいるので。

              提訴から2年経過してあらかた民事訴訟がどういうものか掴めてきて、
              あとは当事者尋問を残すのみ、という段階で読んでみました。

              駆け出しの新米弁護士向け(或いは司法修習生、法科大学院生向け)の事例研究本でした。
              「はじめに」にも「司法制度改革により弁護士が一気に増え、法律事務所に就職もできず
              司法修習修了後すぐに独立を強いられ、訴訟を経験する機会も先輩もいない弁護士が
              たくさんいるので彼らの訴訟技術向上のために書いた」とあります。(要約)

              要するに「新入社員教育テキスト」のレベルなんです。長年の経験で培った奥義が書いてあるわけでは無い。

              たとえば書かれている事例は「証拠が少なくて依頼者の供述が曖昧な火災事故」なんですが
              「訴訟を始めるためにしなければならない、依頼人からの聞き取りの注意事項」だけで92頁あります。
              そもそも第1章のタイトルが「供述の信用性」です。
              よっぽど、世の中の依頼人というのはいい加減な人間が多いのか。

              そう言えば私の訴訟の相手方(被告)の弁護士も、依頼人(被告)のいい加減な話を鵜呑みにして
              ずいぶん法廷で恥をかいていますが、この本のようなことをしなかった、ということなんでしょう。
              そういう意味では「経験があっても分かってない弁護士」が読むのも良いかも知れませんね。

              あとは具体的に「訴状」「答弁書」「準備書面」などが全文掲載されていてケーススタディには
              なっているのですが、事例が「証拠が少なくて依頼者の供述が曖昧な火災事故」ひとつなので
              まったく『普遍性』というものが無い。「できる限り普遍的・客観的視点にて解説」と書いてあるが
              普遍的なのは「新米弁護士に対しての注意事項」が普遍的なのであって民事訴訟についての普遍的な「遂行方法」
              が書かれているのではありません。「聞き取りの時は相手の話をさえぎらないで最後まで聞く」とか、これはもう
              「ビジネスマナー」のレベルです。

              ということで、素人の私にも読み応えの感じられない一冊でした。
              弁護士といっても新米はこんな新入社員と同じレベルなのかという、当たり前の事がはっきりさせられた一冊です。
              新米弁護士が読むなら評価は違うのかも知れませんが私には益のない本でした。

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              【裁判関係本のレビュー-9】訴訟の心得 単行本 - 2015/1/28 中村直人 (著)

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                ★★★★☆ 4点

                総評:"勝てる裁判"の秘訣が満載、ではない。まさに心得本。

                「訴訟の心得」という本の題名と中身がたいへんよく一致しています。
                対象は企業が当事者となる訴訟の初心者(企業の法務担当とか、訴訟の経験がまだ少ない新米弁護士)だそうで、
                「一般人同士の訴訟は対象としていない」と明言している(はしがき)が、しかしこの本の内容は
                一般人相手の民事訴訟の本人訴訟の初心者(私です)にもたいへん有益な内容でした。

                何故かというと、
                まず、民事訴訟というのはどういう流れになっているか、というのは実はどこにも明文規定がありません。
                『実務上、今はこのようになっている』というものがとても多いのです。
                この本はそういう「どこにもはっきり書かれていないこと」を「現状、自分の経験からはこうなっていると言える」
                という、最新の事情をレポートしてくれたものなのです。これは「今の時点」での有力な情報です。

                たとえば、
                「裁判官の心証形成の段取り」【第1章】には、事件の部外者である裁判官が
                どのように事件を判断するか、というプロセスが筆者の経験上の想像から語られます。
                ここは非常に納得が行きます。「神様でもない裁判官がどうして事件を理解できるのか」という大きな疑問は
                裁判を経験していない人間にはまず最初に浮かぶものです。(裁判がルーチンの人には浮かばないでしょう)
                そこをズバリまず最初に説明してくれます。(詳しくは本書をお読みください)
                「敵(裁判官)を知る」のはまず作戦の第一歩です。本書に書いてある事はとっても納得しました。
                「アレはしなくて良い」「コレはしなくてはいけない」という判断が自分でできるようになるわけです。
                民事訴訟の本人訴訟の方、まずこれは最初に知っておくべきです。無駄な作業をしなくて済みます。

                あとは実際の裁判の流れがカンタンに説明されます。これも、訴訟の初心者にはどこにも明文規定が無くて、
                裁判官に質問すると(裁判官は忙しいので)「詳しい弁護士などに相談してください」と門前払いです。
                (それは仕方のない事ではあるが、それではと「書記官」に質問しに行くと、おかしな事を言う書記官もいるので
                本当に困りました)
                しかし、「証言当日に裁判所ですることリスト」のようなものも丁寧に説明されているけれど、
                それは本来は裁判所が作成して無料で当事者に配布すべきものではないか、と思います。

                裁判を経験しながら(まだ係属中)気がついたことは、日本の裁判の手続きというものは
                どこにも明文規定が無かったり、慣習でそうしているだけだったり、誰も正解をしらないままやっている事だったり
                そういうものが非常に多い、ということです。びっくりします。この本の一部分は、そういうものをカバーしています。
                「誰がそうしろと決めたものではないが私は経験上これが良いと思う」というものが書かれている。
                それはたいへん参考になります。(自分も納得できるものはそれを採用する、ということです)

                ですので「素人の本人訴訟」の方にも、読んで為になる本だと思います。ただしあくまで「心得」であって
                自分の信念や思想形成に糧を与えてくれる本ではありません。実用書としてはこの本の価格は高すぎます。
                なので星は五つにはできませんでした。半額にして、あとは裁判所が無料で公開すべき内容と思います。
                裁判所も是非、頑張って欲しいと思います。

                ■ 書いてから気がつきましたが帯の宣伝文句「"勝てる裁判"の秘訣が満載」はまったく違いますね。
                中身は「心得」です。著者は「勝てる」とはどこにも書いてません。本書にいくつも出てくる「下手な
                弁護士の策略」の見本のような宣伝文句です。

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                【裁判関係本のレビュー-8】民事訴訟法 (有斐閣アルマ) 単行本 – 2009/3

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                  ★★☆☆☆ 2点

                  総評:法曹関係者独特の「非常に分かりづらい読みにくい文体」が難点

                  民事訴訟法は「眠素」と学習者からは呼ばれる、と聞いていますが(退屈で眠くなるらしい)
                  訴訟を経験してみると(本人訴訟の原告です・審理中)、人間の品性やら頭脳の善し悪しやら、
                  「司法試験受かった人間がこんな子供のような屁理屈を言うか?」など、
                  人間の隠れた姿が露わにされて「こんなに面白いものがあるのか」と刮目させられます。

                  この本を参考のために(私はあくまで本人訴訟を初めて経験する法律の素人です)
                  さんざん他の書物を読んでから手に取ってみました。初学者向けのようなので
                  見落としていることが簡単に見つかるかも、と期待して、です。

                  が、

                  この本は悪文の典型です。特に第3章がヒドいです。一文が冗長で、長すぎて、しかも
                  (でくくられた例外の紹介が多用されていて)
                  一度の読み下しで理解できる文体ではありません。何度も文頭に戻って読み返さなければ
                  何を言っているのかがわからない。

                  法律家の書く文章は意味が分かり難いのが一般的ですが(しかもそういう文章を気取って書く人もいる)
                  ほんとうに読みづらいです。こんな文章を読まされるから「眠素」なんだろうなと、合点が行きます。

                  声を大にして言います。「読みづらい!」「法律は法律家だけのものじゃない!」「分かりやすい文章を書け!」
                  これから法律の専門家を目指す人には特に言いたい。「こんな文章を手本にしてはいけない」と。

                  初心者に民事訴訟の全体の流れを把握させるならもっと薄い本で十分ですが
                  「知らないところを探求しよう」と思ってこの本を二冊目として手にすると痛い目にあいます。あいました。
                  筆者(複数)はわたしと同世代ですが、洗練された分かりやすい文章を書く訓練をするには遅すぎるでしょう。

                  初学者の読む本ではありません。(分かりづらい悪文の典型です)
                  内容も深みがありません。他の本をあたるよう、専門家を目指す人にも強く助言します。

                  プロにも高度な話題を、法律の素人にも分かりやすく、しかも知的に優れて他の分野の仕事にも役立つような
                  文章を書く人もわたしは見つけました。そういう本と出会うことは幸福です。
                  本物を目指すなら田中豊氏の著書を読むことを薦めます。
                  田中豊氏の本は法律に関係ない仕事をしている普通のビジネスマンにも
                  得るところが大きいです。

                  ☆ふたつ、の評価は「民事訴訟を本人訴訟で初めて提起する」人間からの評価であることを
                  ひとこと付言いたします。

                  この本のアマゾンのリンク

                  【裁判関係本のレビュー-7】民事訴訟の基本原理と要件事実 単行本 - 2011/1/1 田中 豊 (著)

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                    JUGEMテーマ:電子書籍出版


                    ★★★★★ 5点

                    総評:法律の専門家を想定読者とした高度な専門書

                    本人訴訟の原告です。
                    田中豊氏の本は「法律文書作成の基本」「事実認定の考え方と実務」と
                    本書の三冊を読みました。この本はその中でも最も専門家向けの高度な内容です。出てくる
                    事例がすべて最高裁の判例。即ち、最高裁まで争われた、非常に困難な事案についての解説です。
                    これは、新民事訴訟法(平成10年1月1日施行)で、旧民事訴訟法のもとで行われていた実務上の
                    工夫を条文化したけれども、「筆者の裁判官または弁護士としての経験の中で、どのように
                    (職務を)遂行すべきなのか明確でない場面にしばしば遭遇してきた。そのような不明確さの
                    原因は、民事訴訟の基本原理が実際の訴訟の手続きにおいてどのような意味を有していて
                    どのような効果を導くことになるのかが、当該事件で問題とされている実体法上の争点との
                    かかわりにおいて正確に把握されていないところにあると感ずることが少なからずあった」
                    (はしがきから抜粋)

                    そのような「根拠法規と訴訟実務とのギャップ」は、訴訟素人の私もよく体験するところ
                    であるけれども、本書はその中でも「(訴訟という手続きを)一生に一度利用するかどうか
                    というものが理解することができるというわけにいかないにしても、(専門家が)そのような
                    活動の規範をあらかじめ理解することができないというのでは困ります」として書かれた本
                    ということなのです。(はしがきから抜粋)

                    ですから内容は非常に高度です。釈明権(第4章)などの解説は非常に分かりやすく書かれており、
                    専門家でも誤解しているという実態が伺えます。しかし、釈明権の意味の解説が目的ではなく、
                    釈明権の行使をめぐる「問題点」の例示を「判例」を参照しながら最高裁の判決を検討する
                    という内容なのです。これは本人訴訟の初心者がその訴訟活動の実行のために必要とする
                    情報のレベルをはるかに超えています。専門家が読む頂点に属する書物と考えてよいでしょう。
                    専門家を対象にした、「訴訟」というものの実態を非常に先鋭的に描き出したドキュメンタリー
                    として読める、とても読み応えのある一冊です。同時に、日本の訴訟というのは「明文化されていない」
                    実務上の工夫や先例(裁判例、判例)や慣習によって運営されているものなのだな、ということも
                    よく理解できます。例えば「弁論主義」を説明する時に必ず言われる「裁判所は当事者の主張しない
                    事実を判決の基礎としてはならない」という規律は、実はどこにも明文規定が無いそうです。(95頁)
                    この国の民事訴訟手続きには明文規定のないものがたくさんあることを痛感します。それでいいのか?
                    という疑問が募ります。

                    この本のアマゾンのリンク

                    【裁判関係本のレビュー-6】和解交渉と条項作成の実務 単行本 – 2014/12/2 田中 豊 (著)

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                      JUGEMテーマ:電子書籍出版


                      ★★★★★ 5点

                      総評:法律実務家を対象とした優秀本


                      本人訴訟の原告です。提訴から2年経ちました。
                      提訴前から和解提案し、提訴後も和解を何度か提案しましたが
                      被告代理人弁護士がまったく応ぜず判決まで行こうとしています。

                      形勢は私に有利と判断していますので裁判所から和解の提案が成された時に
                      どのように応じたら良いのか準備の為に読みました。

                      日本は民事訴訟の32%が和解で終わり、判決で終わるのは33%だそうです。
                      (出所:平成23年度司法統計第19表 第一審通常訴訟既済事件数)
                      しかしその他の3割近くを占める「取り下げ」も訴訟外の和解によるものも
                      多数含まれていると考えられる為、「和解」が紛争の解決に果たす役割は
                      「判決」以上のものがあると考えて差し支えが無い。
                      ならばそれを勉強しておくことも当事者として重要だろうと考えました。

                      そもそも田中豊氏の本にはハズレが無い。
                      この本もQ&A方式で書かれており、その回答も
                      「和解の申し出をしたら自らの立場が弱いことを自認しているとして裁判所から
                      その後不利に取り扱われるのでは無いかという懸念は不要といってよいと思います」
                      などと明快で分かりやすい。

                      読み手は明らかに「法務のプロ」すなわち弁護士や裁判官ですが、
                      私にもたいへん分かりやすい一冊です。和解提案が来そうだったら、その前に読んでおけば
                      プロと渡り合える準備が整えられる本と思います。

                      この本のアマゾンのリンク



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